板倉 徹 『ラジオは脳にきく』(東洋経済新報社,2006年)


  著者は,脳神経外科の教授・専門医である。大脳には,生まれた時に

 およそ1000億もの脳細胞(神経細胞)があるが,増えることはなく,1日

 ごとに細胞が死滅していく。何も刺激を受けずにいた脳細胞はどんどん

 死んでいくが,刺激を受け続けた脳細胞は死なないそうである。


 現代は,未曾有の便利な時代であるが,それがかえって脳機能の低下

 をもたらしている。それはテレビの普及とちょうど重なる。テレビは想像力

 の働かせる場面が少なく,ただ画面を眺めていればわかったような気分に

 なり,何も考えないようになっていく。1日中テレビをつけたままにして何も

 考えずにボーッと見続けるのが最悪で,ときどき居眠りをするようになれば,

 認知症の前触れとのことである。


  脳の働きを活発にするには,想像する行為が大切で,それにはラジオが

 よい。ラジオは,映像情報がなく,音声情報しか脳に届かないため,脳は

 得られない情報を補おうとして働く。音声情報から場面を想像するのがよく,

 脳を活性化させ鍛える。漫画よりも読書がよく,音読が脳の活性化によい

 らしい。


  想像力をなくせば,他人に何をすれば相手がいやな思いをするか,心に

 痛みを感じるのかがわからなくなり,そのような人間は,脳の働きが低下し

 ているのではないかという。

   紛争解決のためには,相手方の立場で考え想像することが大切である

 と思っているが,想像力と脳の活性化の視点は,大変に興味深い。

                (事務所報「そよかぜ通信」2007年3月/第5号)


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