宮城谷昌光 『孟掌君』(講談社文庫)

   「晏子」「重耳」の宮城谷昌光氏は、枕草紙の歌や鶏鳴狗盗で知られる孟掌君を、

  「病める現実を精神の理想へと導く牽引車ともいうべきヒーロー」として描き、崇高

  なひとつの「生き方の規範」を示しているようです。

   とくに主人公の養父・白圭の描き方がすばらしく、その生き方は心が洗われる思い

  です。白圭や親しい人の死に接して、「今日つくったいのちも明日にはこわれる。

  それゆえ、いのちは日々産み出すものであろう」という主人公の思いは感動的です。

   この作品によって、寒風の中でも、少しでも背をピンと伸ばして、勇気を出して

  もう少し歩いてもみようかなという思いを持てるのは、私だけではないと思います。

            ※事務所報「白い雲」<1999年新春号(41号)>から


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