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 また、自然の「おきて」を柔らかな感受性で受け止めていく薫ちゃんの言葉が

素晴らしい。

  「ヌーの親子は全速力で逃げるが、子供はどうしても遅れがちだ。母親はうしろを

  振り返り、追い迫るハイエナめがけて必死の反撃にでる。が、ハイエナの一頭が

  応戦している間に、もう一頭が子供に追いつき引き倒す。母親は戦うのを止めて

  逃げ去った。 … 

  ヌーの子供はまだ生きている。頭を起こして、『ンモー、ンモー』と鳴く。と、

   『ハイエナって、えらいね、一生けんめい、食べる。丈夫な体をつくるんだね』

   『えっ』

   窓際の薫は背筋をピンと伸ばして外を見つめている。…

   『ママ、ヌーの子供は死んじゃったよ。私もおなかがすいた』…

   『食べられたヌーの子供が、かわいそうだとは思わないの?』

   『かわいそうだよ。ほんとうに、かわいそうだと思う。だから見ているの』」

                                          (164頁〜165頁)
 写真も豊富で、セレンゲティでの生活や

動物の息づかいが十分に伝わってくる。

とくに39頁のタンザニアの子どもに囲まれた

薫ちゃんの写真(右の写真)は、何ともいい

表情をしている。

  「ジャンボ(こんにちは)」

  「ジナ・ラコ・ナニ(あなたの名前はなんていうの)?」

  「ミミ・カオル(わたしは薫よ)」

  「アサンテ・サーナ(ありがとう)」

といったスワヒリ語の会話が聞こえてくるようである。
 動物写真家・岩合光昭氏、妻の日出子氏、それに4歳の薫ちゃんの家族が、

東アフリカのタンザニアのセレンゲティで約1年半暮らした「親と子のセレンゲ

ティ・ライフ」。 なお、ポレポレというのは、スワヒリ語でゆっくりという意味。

岩合日出子 『アフリカ・ポレポレ』 (新潮文庫)