(事務所報「そよかぜ通信」2015年3月/第14号)
(ヴェルディの胸像)
        心洗われるアッシジの聖地





        地中海の奇跡」





δ 上の写真は,パレルモのマッシモ劇場(Teatro Massimo)。正面左側に,ヴェルディの胸像が

  あり,付近はヴェルディ広場と呼ばれる。シチリアは地中海の中央に位置する最大の島で,パレ

  ルモはその州都である。南国の植物や建物の雰囲気は独特で,非ヨーロッパ的なイスラム文化

  の雰囲気を感じる。シチリアは,ローマ,ビザンツの後,イスラムの支配下となるが,これらの遺構

  の多くは,イスラム教徒が支配した時代のものではなく,その後のノルマンの時代に築かれたとい

  う。

δ シチリア州議会場としても使われるノルマン王宮(Palazzo dei Normanni)は,9世紀に建設が始

  まりノルマン王によって拡張された。王宮内のパラティーナ礼拝堂(Cappella Palatina)は,1130年

  に戴冠した初代ノルマン王・ルッジェーロ2世により建設が始まった。ビザンツ風の金色モザイクと

  イスラム風の凝った天井装飾・タイルが見事である。

δ イスラム教徒の支配は,9世紀初めから約200年で,キリスト教徒と共生した「イスラムの寛容」と

  いわれる時代である。その後の約200年のノルマン人(キリスト教徒)による支配は,被支配者となっ

  たイスラム教徒を排斥せずに共生した。「地中海の奇跡」といわれる共生の約400年である。

δ ノルマン時代の1184年にパレルモを訪れたイブン・ジュバイルは,旅行記に次のように記述してい

  る。 「古くて優美な,壮麗で優雅な,見る目を魅惑する町である。一面に果樹園が広がる平野と平地

  に誇らしくそそり立つ町で,路地も通りも広く,見事な外観はひときわ目立ち,人々の目を眩惑する。

  町並みはコルドバ風で」,数多くの金銀細工の十字架をもつ教会や修道院がある。 「この町のイスラ

  ーム教徒たちはまだ信仰を守っており,ほとんどのモスクも維持され,アザーンの声が聞こえると礼

  拝を行なっている。…市場はイスラーム教徒たちで賑わい,イスラーム教徒がそこの商人である」(藤

  本勝次=池田修監訳『イブン・ジュバイルの旅行記』464〜465頁,講談社学術文庫)。

δ グリエルモ2世は,王国内で話される多言語を自由に話せる温厚なノルマン王で,恐ろしい地震が

  起きた際に,おびえる侍女や小姓に,「おまえたち,おのおの自分の崇めるものに,信じるものに加護

  を祈願せよ」と言って恐怖をしずめたというエピソードを,この旅行記が伝える(前掲455頁)。

δ この共生の時代を終わらせたのは,ローマ法王の支援を受けたフランス人(アンジュー家)であるが,

  この支配も,ヴェルディのオペラ“シチリアの晩鐘”で有名なシチリアの民衆の蜂起で終わる。しかし,

  代わって進駐してきたスペイン人(アラゴン家)は,フランス人よりもさらにキリスト教的で,「地中海の奇

  跡」も消えることになった。