弁護士の職業倫理
「そよ風通信」第8号
 弁護士の職業倫理を考えることが多くなった。弁護士倫理特別委員会の委員

長を2年目も努め,毎月,早朝の倫理勉強会を実施している。弁護士倫理(弁護

士職務基本規程)につき,中央大学の授業で触れ,修習にきた司法修習生とも

話をし,東京の三弁護士会の有志による『弁護士倫理の理論と実務』(日本加除

出版,2009年12月発行)の執筆にも参加した。

 専門家の責任,自己決定権,情報提供義務といったことを考えるうち,弁護士

と依頼者との関係は,委任契約ではないという考え方を知って驚いた。日常の弁

護士業務では,委任契約書を締結し委任状をもらっているのに,委任契約では

ないという。

 では何なのか。依頼者との関係の本質は「信認(fiduciary)」関係である。 「契

約」は当事者が互いに自己の利益を追求することを前提とする関係であって,

医師・患者関係がそうでないのと同様だという。

 樋口範雄氏の『フィデュシャリー[信認]の時代』(有斐閣,1998年)等の著作を

読んでみた。専門家の「裁量を認めながら濫用を防止する」法技術が重要である

という。信認関係の本質は依存関係で,専門家が依頼者の利益を優先して考え

るという基本原則に立脚している。専門家側に基盤となる職業倫理があることが

重要で,それは契約合意によって取り入れられるのではなく,その基盤の存在を

前提に信認関係が生じる。弁護士職務基本規程はこのような基盤である。

                                      (2010年2月)

                                    弁護士 溝 口 敬 人