「誠意を見せろ」について
「そよ風通信」第16号

 企業の担当者から,顧客とのトラブルで,「誠意を見せろ」と言われてどう対応したもの

かと相談を受けることがあります。企業の研修でもこの対応に関して話をすることがあり

ますが,なかなか難しい問題です。

 関根眞一氏は,『となりのクレーマー』(中公新書ラクレ,2007年)で,「どういう答えをして

も,『それだけか』という言葉がついてきます。そんなときは,遠慮なく,『誠意』の見せ方を,

逆にお客様にお尋ねしましょう。自分からは『何々をする』などと絶対言わないことです。

だいたい『誠意を見せろ』とは,本来ヤクザが使う言い方です。この頃は素人も平気で使

います。」(193頁)と指摘します。誠意だと考えて精一杯の提案をしても,たいていはお叱り

を受け,交渉のスタートラインを一方的に譲歩した結果になりそうです。

 そして,関根氏は,「誠意ある対応」の態度として,「苦情を聞くときは,『拝聴する』という

気持ちで臨む」,「必ずメモを取りながら聞く,聞き逃したら確認させていただく」,「記録した

ことは,必ず復唱・確認する」といったことを挙げます(180頁)。これでは,最初から勝負に

ならないと思うかもしれませんが,ここに重要なヒントがあります。

 「誠意」というのは,相手方の要求にただ譲歩することではなく,相手方の要求内容を真摯

に受け止めることではないか。きちんと受け止めた上で,是々非々で解決に向けた対応を考

えたのであれば,たとえ要求を断ったとしても誠意がないことにはならないと考えたらどうで

しょう。だいぶ気持ちが楽になりそうです。

                                       (2017年3月)

                                  弁護士 溝 口 敬 人